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みなかみ移住・起業チャレンジ「みなかみ町で広げる可能性の輪」Licca長壁夫妻

みなかみ町ローカルチャレンジプログラムFLAPでは、みなかみ町への移住・地域の資源を生かした起業の支援を行っています。

今回は現在みなかみ町に移住し、そして地元の資源を活用したアロマオイル事業で起業された長壁さんご夫妻に、みなかみ町での暮らしや取り組み、将来についてコラムをいただきました。


■自己紹介


私達夫婦は関西出身で、今年の4月にみなかみ町に引っ越してきました。

夫婦ともに青年海外協力隊(現JICA海外協力隊)に参加していたというバックグラウンドがあり、僕は東ティモールに、妻はラオスで活動していました。今私たちが森の間伐材を原料にエッセンシャルオイル(以下、精油)の製造業で起業したのは途上国での体験が元となっています。

帰国後、僕はタイの大学院へ進学し開発コンサルタントを目指していたのですが、ビジネスを通して国際協力や地方創生に携わりたいと考えるようになりました。そのような話を妻(当時はまだ彼女でしたが。笑)としていた時に、妻から香りの持つ可能性を聞きそれを商材に事業をおこないたいと考え妻に起業を持ちかけました。


■移住候補地の選定はどのように?


当初はラオスで起業しようと考え、実際に現地へ足を運び情報収集していたのですが、私たちの業種で起業するのは現在の私たちにとってかなり厳しいことが分かってきました。

そんな時、妻から「私たちのやりたいことって、ラオスじゃないとできないことかな?」と言われ、スタートを途上国での起業にこだわりすぎていたことに気づきました。

自分たちのやりたいことに立ち返りあらためて考えてみると、それって日本でもできることだし、ふたりとも日本の地方にも興味がある、それならば日本の地方で起業しよう!と国内での事業候補地の選定に入りました。

その頃には、森の間伐材を原料にした精油の製造事業での起業で方向性が固まっていたので、候補地の選定は、①森林資源が豊富にあること②挑戦や移住に対し寛容的な場所か③自分たちが好きだと思える土地か、の3つの条件をもとに進めていきました。


■みなかみ町に出会った経緯は?


僕が海外協力隊時代の友人(町内在住)に誘われて、遊びに訪れたのが最初にみなかみ町を知ったきっかけでした。

その時は3時間ほどの滞在だったのですが、町内の色んな場所を案内してもらい、町の持つポテンシャルを友人から聞いていたのがとても印象に残っています。

そしてなによりきれいな自然の風景が頭に残っていました。


■みなかみ町に移住を決めた理由は?


国内での候補地を選定している時に、豊かな自然と面白そうな町というキーワードからみなかみ町を思い出しました。

2019年の12月に妻ともみなかみ町を訪れたのですが、大自然の迫力に改めて圧倒されて、「ここの自然に携わりながらモノづくりがしたい」と強く感じました。

実はその夜に初めて友人から紹介された町の人がFLAPの方でした。私たちの事業案に耳を傾け、「ぜひ一緒にやりましょう!」と言って色々なアイデアを出してくれたのが好印象で、見知らぬ土地でひとり味方が増えたような安心感をそこで得たような気がします。


その後、町役場の移住相談窓口の方にも相談に行ったのですが、担当者の方は自身の移住者としての経験をもとにざっくばらんに話をしてくださいました。「おふたりには移住してから後悔してもらいたくないので、最初の一年位は隣の市から通って様子を見てもらっても大丈夫ですよ」と、あくまで私たちの立場で移住を考えてくれている雰囲気が感じられ、いろんなことが相談しやすくなりました。 ここでも“味方が増えた”と思いました。

今思うと事業環境も魅力的だったのですが、この“味方が増えた”と思える出会いが、この町では次々に発生していったことで町の人に大きな魅力を感じたのが移住の決め手だったかもしれません。

よそ者だった私たちでも地域に入りやすくなるような環境づくりをしていただいたおかげで新しい挑戦を一緒になって楽しみ、応援してくださる存在が地域に出来たことで、自分たちが安心して起業ができていると感じます。


■移住までにおこなったこと


具体的には、事業の拠点となる場所(住居)と事業をおこなう上で必要になりそうな協力者を探しました。FLAPや移住相談の担当者に次回の訪問時に会いたい人を伝え、コーディネートしてもらっていました。

具体的には、町の森林資源を管理する(当時の)エコパーク推進課や自伐型林業をおこなっている方々です。その他、実際に移住し起業されている町の先輩方や関係する事業者さんにもお会いし、移住当時の話や生活面でのお話を聞かせていただきました。

住居に関しては、当初賃貸物件を対象にネットや空き家バンクで家を探していたのですが、正直なかなか納得のいく物件を見つけることはできませんでした。

当初、東ティモールやタイでお湯シャワーもない生活を送っていた僕にとって、お湯が出る物件ならそれだけで大丈夫と言っていましたが、今思えば恐ろしいことを言っていたなと反省しています。当時の妻の冷静な判断にはとても感謝しています。笑

最終的に今の住居は地元の方からの紹介でした。移住相談の担当者に、具体的に理想的な物件条件を相談していたところ、ちょうど条件に合いそうな空き家物件があると紹介されたのが今の家です。

地方では都市部のように何でもネットに情報が載っているわけではないので住居探しの際に不便だと感じることもありましたが、ネットで拾いきれないお宝のような情報が現地にはたくさん眠っているので、住居や事業のための物件&土地探しの際は可能な限り現地へ足を運び、現地の人から情報収集するのが良いのではないかと感じます。


■移住後から現在までの経過


自然の香りでみなかみ町と人をつなげたい、そんな気持ちを持ってこの町へ移住し、夫婦で精油の製造販売業を始めてから約半年が経ちました。

みなかみ町の山を管理する際に出る間伐材や谷川山系を流れる湧き水を使って精油を蒸留しているのですが、現段階では当初予定していた計画よりも速いスピードで事業を展開することができています。

私たちの引っ越したタイミングは最悪で、コロナウイルスによる緊急事態宣言の発令直前だったため近所の方々にすぐご挨拶に行くことができませんでした。その際に、役場の方々や空き家の前の持ち主さんのご厚意で、前もって近隣の方々に事情を説明していただき手紙を渡していただいたことで、近隣住民の方にも私たちの状況を受け止めて頂くことができました。

実際にあいさつ回りができたのは引っ越ししてから3週間後でしたが、前述の説明等のおかげで地域へスムーズに溶け込むことができました。

今では美味しい野菜やご飯をおすそ分けしていただいたり、私たちの事業に必要なみなかみ町にある植物や山の情報などを提供していただいたりと、近所の方々には公私ともにとても助けて頂いています。

家族が大好きな妻が実家から離れても楽しく生活できているのは、地域の方が親切にしてくださっているおかげであり、移住後に困らないように支援してくださった役場の方や前所有者の方のおかげだと思います。


事業については、5月末から試験蒸留を開始し8月中旬から最初の製品である精油4種を販売開始しました。 現在では6種までラインナップも増え、当初ひとつしかなかった蒸留窯も4つまで増やし精油の増産体制を整えています。

原料の調達は、僕が所属している自伐型林業グループ(木木木林https://kikikirin.com/)と地元の林業の会社、そのほか原料採取の許可をいただいた周囲の民有林からおこなっています。これらの調達ルートは、私たちの事業案を聞いてくれた地域の方々がご紹介してくださったご縁から成り立っています。

繰り返しになりますが、地域の方の理解と協力なしにはここまで速いスピードで関係者との関係を構築することはできなかったと思います。本当に感謝しかないです。


主な販路は、オンラインショップや町内の道の駅、宿泊施設や土産物店です。 精油販売のほかに、旅館のロビーで使用するオリジナルブレンドの香りを調合させていただく香りのコンサルティングのようなお仕事もさせて頂いております。また、地域の旅行事業者と連携し、町内を訪れる修学旅行生への香育事業も始まりました。

これは卓上蒸留器を使い、町内外の香りをその場で抽出し、その違い・理由について議論を深めたり、目に見えない香りを言語化しアウトプットするプログラムです。香りを通して科学や芸術、国語の表現力を総合的に養うことが期待できるので今後町内でも展開していければと考えています。

また、妻の「香りをみなかみ町の森の事を知るきっかけにしてもらい、未来にもみなかみ町の豊かな自然を残していきたい」という想いから、地域への貢献・連携強化の一環として依頼をいただいた地域の小学校に精油等を展示し、みなかみ町でとれた香りを子どもたちにも知ってもらう機会を提供させていただいています。


■今後の取り組みと目標


・新たな製品の投入


・香りの調合事業の更なる展開


・町内の施設にみなかみ町の香りを感じ  てもらえるアイテムを普及させていく


・香育分野の事業モデルの確立


・赤谷プロジェクトとの協働事業の検討


上記のようなことに力を注いでいこうと考えています。




地域の方々には香りを通して、みなかみ町の自然の魅力を再発見してもらえるような活動をさらに広げていきたい。 そして、観光客の方にはみなかみ町での素敵な思い出を香りとともに持って帰っていただき、自宅に帰られてからも香りによってみなかみ町を思い出してもらい、また訪れたいと思ってもらえればなと考えております。 香りの事業を通して人々と町の架け橋になることで、お世話になっている方々に恩返しをし、大好きなみなかみ町の地域活性に貢献することが、今の私たちのモチベーションとなっています。 少しでもみなかみ町での生活にご興味を持たれた方がいらっしゃれば、気軽に遊びに来てもらいたいです!!お待ちしています!

文責:長壁総一郎



■プロフィール


長壁総一郎 (Osakabe Soichiro): 製薬会社の営業として5年間勤務したのち青年海外協力隊へ参加。 2015年に東ティモールへ赴任しコミュニティヘルスケアの強化事業に従事。 2018年に帰国後、タイの大学院へ進学し都市環境管理を専攻する。妻と話し合い、やりたいことが事業として実現できるような移住候補地を国内外から選定し検討する。結果、人・環境ともに最も魅力であったみなかみ町への移住を決める。 2020年5月より妻と事業開始し現在に至る。移住後は地元の自伐型林業チームに所属し、地域の森林資源を管理しながら原料調達をおこなっている。 長壁 早也花 (Osakabe Sayaka): 2015年、青年海外協力隊に参加。ラオス南部にある児童館で子供たちに音楽や図工、日本語を教えたり、職員へのスキルアップ研修を開催したりするなどをして活動。 ラオスの自然豊かな景色が好きで、帰国後に自然を活かす知識を付けるためにアロマテラピーインストラクターの資格を取得し、自然派化粧品ブランドに就職。 より実践的に森の保全と利活用を行いたいと考え精油の製造販売事業を行う事を決意し、自然豊かなみなかみ町への移住を決める。


LICCA みなかみ町の間伐材で抽出した、人と自然に優しいアロマオイルブランド

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